裏庭からスピカ

基本は雑記、ときどき小説の話……をしたい。

You'll Never Walk Alone

2004-05シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝、ACミラン×リヴァプールFCによる試合は“イスタンブールの奇跡(あるいは悲劇)”として広く知られています。

前半は圧倒的なミランペースで3ー0、しかし後半にリヴァプールが3点差を追いつき(たしか6分間での3得点だったはず)最後はPK戦によって大逆転を演じてみせたのです。余談ですが、リヴァプールGKイェルジー・デュデクは最高でした。彼がみせたダンスを世界中でどれだけの人間が真似したことか。

 観ていた誰もが「力の差がありすぎる……」と目を覆いたくなるような前半を終え、両チームはハーフタイムへと入ります。だけどはるばるイスタンブールまで駆けつけたリヴァプールサポーターは、諦めることなく「You'll Never Walk Alone」を大合唱して愛するチームを鼓舞するのです。胸に響く、本当にいい歌なんですよ。

先日の日本×ベルギーの激闘とその幕切れまで見届けて、あのときのリヴァプールサポーターの気持ちが少し理解できた気がします。

日本代表の選手たち、西野監督、スタッフの方々、本当にお疲れさまでした。

 

ちなみに。“イスタンブールの奇跡”から2年、アテネで行われた2006-07シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝は再び同じ顔合わせとなります。

そして今度は歴史的大逆転を食らった側のミランが2-1で雪辱を果たすのです。

備忘録

備忘録……かつてフィリップ・トルシエの下でコーチを務めた山本昌邦が同タイトルの本を出していますね。サッカー日本代表が初めて決勝トーナメントへ進んだ2002日韓W杯から16年、今回のロシアW杯は日本サッカーにとって重要な局面へ差し掛かっているのかもしれません。

そんなわけでグループリーグの最終戦だったポーランドとの一戦をどう受け止めるか。やはりワールドカップである以上、結果がすべてだと私は考えます。ただしそれは次戦まで含めての結果です。

決勝トーナメントへ進出することのみを見据えれば、大きくコンディションを崩した選手がいないのならここまでのいい流れを崩す必要はまったくない。明らかに、西野朗率いる日本代表は歴史を変えるベスト8を狙っている。

しかし決勝トーナメント1回戦の相手はベルギー代表。ルカクアザール、デ・ブライネらを擁して今大会屈指の攻撃力を誇るベルギーとどこまでやり合えるか。それによって“世紀の凡戦”とでも呼ばれそうなポーランド戦の評価も変動するのではないでしょうか。強豪ベルギーの前にこれといった見せ場もなく敗退したなら、そのときは指揮官も轟々たる非難を甘んじて受け止めるしかないな。

個人的には勝つか負けるかよりも、血が沸騰しそうなほどの好勝負を見せてもらえればもう何も言うことはないです。ベルギーとのド派手な撃ち合いになった日にゃ、はたして心臓が持つのかどうか。

たられば

「たられば」を口にするのは本当につまらない行為だとわかっちゃいるのですが、それでもやっぱり諦めきれないことはあるものです。

もし、イビチャ・オシムが病に倒れていなければサッカー日本代表ははたしてどのような軌跡を描いていただろうか。もうほんと、今までにたぶん何百回と思ってる。

もちろん現実を下回る成績になっていた可能性はあります。さすがにワールドカップ出場権を逃すことはないにせよ、南アフリカでの本大会で予選リーグ敗退ってのは普通にありえた話でしょう。

それでも。オシムであれば、現実と理想の折り合いをつけた道筋をこれからの日本代表へ提示できたのではないかと夢見てしまうのです。

本当に、夢でしかない話だ。

 

サランスク、エカテリンブルクボルゴグラード。ロシアの地でもうすぐ始まる日本代表の戦いを、静かに応援しようと思います。グッドラック。

お菓子には夢がある

たぶん愛とか希望とか魔法とかもある。そりゃもうてんこ盛りよ。

お菓子屋さん、洋菓子店、パティスリー、呼び名は何でもいいのですが、とにかく店のショーケースに色とりどりのケーキが整然と並んでいる光景はとても美しいと思います。宝石箱になぞらえて語られることもきっと多いでしょう。

でも生菓子は生き物同然。その命の短さ、儚さゆえに宝石とはまったく別種の美しさなのです。もし私がInstagramをしていたなら、おそらく半分の画像はケーキ類で占められるんじゃなかろうか。

最近、若木民喜なのは洋菓子店のいい仕事』というマンガを読み終えました。とにかくお菓子たちが美味しそうな絵で描かれていてどれも片っ端から食べてみたくなる。ミルフィーユ、モンブラン、フォレ・ノワールフロマージュ・クリュ、オペラ……。

作中で触れられるのですが、洋菓子店ならどこでもありそうな苺ショートが実はそうではないというのはたまたま知っておりました。かつて住んでいた場所の近くにあったパティスリーのショーケースになく、不思議に思って調べましたから。「フランスから来ました」みたいな顔をしているあの子は日本生まれ。でも美味しけりゃ何でもいい。

そんなフランス志向のパティスリーである、大阪吹田にあったケ・モンテベロ(現在は移転して北新地)がめっちゃ好きでした。木の扉の先、通路を抜けてたどり着くほの暗い店の佇まいも含めて。

本屋大賞と推理作家協会賞

先日、2018年の本屋大賞が発表されて辻村深月かがみの孤城』が大賞に選ばれました。この本屋大賞、始まったのが2004年とまだ歴史は浅いにもかかわらず、今や相当な影響力を持つ賞として認知されておりますね。

「全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本」のキャッチコピーを掲げていますが、同時に「売りやすい」本でもあるかな、と感じます。といってもネガティヴな意味合いではなく、誰が読んでも外れのない作品が選ばれているってことです。

これまでに読んだ本屋大賞作品(ノミネートまで含めて)に対して、私はそういう印象を抱きました。本当にすごいアベレージだと思う。

 

一方でアベレージヒッターがいればホームランバッターもいる、そういうものです。なので、もう一つ別のエンタテインメント系文学賞をプッシュしたい。日本推理作家協会賞がそれです。ここの長編賞には塊感のある物語がずらりと並んでいます。

「でもそれってミステリ作品ばっかりでしょ」と思われそうですが、どうもミステリの定義自体が非常に広範らしく、ちょっとでも謎の要素があればOKのようで。じゃなければ古川日出男『アラビアの夜の種族』が受賞したりはしないでしょう。ジャンル横断型の物語とはいえ、ファンタジーに分類される方がミステリよりはまだしっくりくるくらいですからね。まあ、そもそもジャンル分け議論を不毛に感じるほどに圧倒的な物語ではありますが。

こちらの賞はたとえ受賞作であっても人によって合う、合わないはあると思います。ですががっちり噛み合えば「すげえの読んだ……」という読後感に浸れますから。

5月に映画公開を控えている柚月裕子『孤狼の血』も受賞作ですね。映画の予告をご覧になれば原作のギラつきっぷりも伝わるはずです。すごい熱量ですよ。

 

そして今回、冒頭で名前を挙げた『かがみの孤城』がこちらにも大賞候補作としてノミネートされているのです。もうこれだけでも拍手喝采なのですが、4月26日の選考発表を静かに見守らせていただきます。