裏庭からスピカ

基本は雑記、ときどき小説の話……をしたい。

君の庭

何か『君の名は。』っぽいタイトルだな、と思われそうですが実際その通り。『君の名は。』+『言の葉の庭』の話です。といってもメインは『言の葉の庭』、しかもノベライズの方。

 

2016年夏に『君の名は。』が公開されたわけですが、どえらいヒットだということでさっそく書店にも特集コーナーが組まれておりました。そこに新海誠自らによる小説版『言の葉の庭』も並べられていたのです。映画は1時間にも満たない長さだったにもかかわらず、なぜか400頁近い厚さ。

その理由は目次ですぐにわかります。靴職人を目指す少年孝雄と雪野先生の交流に絞って描いている劇場版に対し、小説版は二人の周囲の人間も含めた群像劇といっていい。

 

全10話+エピローグという構成で、秋月孝雄の兄や母、雪野先生のかつての恋人などがそれぞれ一つの話の主役となっているわけですが、その中で最もインパクトがあったのは間違いなく第7話の相澤祥子です。

映画は観ているんだけど誰だっけ、と思われた方には「雪野先生が休職に追い込まれる元凶となった女子生徒」と説明すればわかりやすいでしょう。

何が衝撃的って、自ら「ヒエラルキーの底辺だった」と認める彼女の中学時代に、とても親しい友人として登場するのが勅使河原とサヤちんなのです。たぶん、この箇所を読まれた人のうち95%くらいは「こいつ三葉やんけ!」と心の中で叫んだことでしょう。残りの5%は口に出して叫んだ人。

そして読み終えた後でまた思う。相澤祥子は立花瀧に出会えなかった宮水三葉なのだ、と。理不尽さすら感じるほどのパラレル・ワールドなわけですが、外罰的でありながら内罰的でもある相澤への新海誠の目線は優しい。他の人物の章で彼女が今後立ち直ることを示唆しています。

 

昨夜の地上波初放送『君の名は。』を見逃して、そんなことを思い出しました。

小説版『言の葉の庭』、劇場版をご覧になった方には特におすすめします。